沖縄を代表する蒸留酒、泡盛。その独特の香りと味わいをじっくりと楽しむための器といえば、皆さんは何を思い浮かべますか?独特な形の「カラカラ」を想像する方が多いかもしれません。しかし、実はカラカラだけじゃない、泡盛の奥深い世界を彩る魅力的な酒器がたくさんあるんです。
そして、沖縄の言葉で焼き物を意味するやちむん。泡盛とやちむんは、琉球王国時代から密接な関係を築いてきました。現代の泡盛は瓶や紙パックが主流ですが、かつてはすべて甕(かめ)などのやちむんに入れられていました。
単なる酒器としてだけでなく、泡盛の歴史と文化を支えてきたやちむん。この記事では、そんな深い繋がりを持つ泡盛とやちむんの魅力に迫ります。
- 泡盛の酒器について
- 泡盛の甕について
- やちむんの種類について
- 古酒造りの甕について

この記事は沖縄移住生活13年、泡盛マイスターのももとが書いています。

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目次
カラカラだけじゃない!泡盛の酒器
泡盛を入れる酒器はカラカラだけではなく、様々なやちむんの酒器があります。主なやちむんの酒器を紹介します。
- カラカラ
- 抱瓶(だちびん)
- ユシビン
- チブグヮー
カラカラ

カラカラは沖縄で生み出された酒器で、やや平たく丸みを帯びた胴体に、すっと伸びた注ぎ口がついているのが特徴です。容量は1~2合のものが多いです。
「空になったものを振るとカラカラと音がした」と言う説がありますが、実際に音が鳴るものはあまりないように思われます。
抱瓶(だちびん)

抱瓶(だちびん)は、中国や朝鮮の影響を受けて沖縄で発展した、持ち運び用の酒器です。
腰に沿うように湾曲したユニークな形が特徴で、紐を通すための「耳」が左右に付いています。ここに紐を通して、肩や腰から提げて携帯していました。
現在では実際に酒器として使われることは少なくなりましたが、その独特な形状から、観賞用の置物や花瓶として愛されています。
ユシビン

ユシビンは、結納などのおめでたい席で用いられる、格式高い酒器です。
その名の「ユシ」は、沖縄の言葉で「おめでたいこと」を意味する「かりゆし」に由来します。
かつては、祝い事のある家に泡盛を入れて贈り、贈られた家は中身を別の容器に移し替えた後、ユシビンを空にして贈った側へ返すという、独特の風習がありました。単なる酒器ではなく、人と人との繋がりを象徴する、特別な意味を持つ器でした。
チブグヮー

チブグヮーは、貴重な古酒や度数の高い泡盛を味わう際に使用される小さな猪口です。
日本酒の猪口と比べると一回り小さいものが多く、上部が広がる形状が特徴です。これは、泡盛の豊かな香りを最大限に楽しむための工夫です。一口ずつゆっくりと、泡盛の奥深い香りと味わいを堪能するのに最適な酒器と言えます。
酒器はカラカラだけではない!泡盛とやちむんの関係

- 甕が泡盛を入れるコンテナだった
- 上焼(ジョウヤチ)と荒焼(アラヤチ)
- 古酒造りのための甕
- 古酒(クース)造りに適した甕
- 泡盛の甕熟成について
昔はやちむんの甕が泡盛を入れるコンテナだった
沖縄で古くから、泡盛とやちむん(焼き物)は切っても切れない関係にありました。
琉球王国時代、泡盛は王府が厳重に管理する貴重な輸出品。現代のように瓶やコンテナがなかった時代、泡盛はすべてやちむんの甕に入れられ、国外へと運ばれていました。
実は、沖縄で陶器作りが盛んになった背景には、泡盛を詰めるための容器を生産する必要があったから、という説もあります。また、現在でも見られる、泡盛の甕の周りに巻かれたシュロは、輸送時の衝撃を和らげるための工夫だと言われています。

やちむんの上焼(ジョウヤチ)と荒焼(アラヤチ)
やちむんの種類は、上焼(ジョウヤチ)と荒焼(アラヤチ)に分けられます。上焼と荒焼の特徴は以下のとおりになります。
やちむんの上焼
上焼(じょうやき)は、釉薬を施して高温で焼き上げたやちむんです。
表面はガラス質の膜で覆われ、つるつるとした美しい光沢を放ちます。強度が高く、主に食器や花瓶など、日常的に使われる品に多く見られます。
やちむんの荒焼
荒焼(あらやち)は、釉薬を一切使わずに焼き上げたやちむんです。
素朴な土の風合いが特徴で、別名「南蛮焼」とも呼ばれます。主に泡盛の甕や水を溜める甕など、大型のものが多く作られてきました。特に泡盛の熟成には、この荒焼の甕が欠かせません。
甕で育む泡盛の古酒
泡盛には、古くから長期貯蔵酒である古酒(クース)を尊ぶ文化があり、琉球王国時代から造られてきました。
「古酒造りには南蛮甕が最良」と言い伝えられてきたように、泡盛と甕は切っても切れない関係です。もちろん、現代のステンレス製のタンクや瓶でも泡盛は熟成し、3年以上貯蔵すれば古酒と名乗ることができます。
しかし、甕で熟成させることで、その熟成速度や酒質が他の容器とは異なると言われています。甕の持つ微細な多孔質が泡盛の呼吸を助け、よりまろやかで奥深い風味を育むとされているからです。
古酒(クース)造りに適した甕

古酒造りには、まず良い甕を選ぶことから始まります。
- 釉薬を掛けていない荒焼(アラヤチ)の甕
- 土の成分に熟成を促進させる金属成分(鉄・マンガン・マグネシウムなど)が程よく入っている
- 強く焼き締まり(キーンとした金属音やこげ茶色)、漏れのないこと
- 甕首長さが4~5cmで変形していないもの
- 異臭のしないもの
もし、甕でクースを造ってみたいと思う場合は、なるべく上記の特徴を備えた甕を選ぶようにしてください。さすがに土の成分まで調べるのは難しいと思いますが、音や色や形などは見た時に確認できますよね。

赤っぽいのは焼きが甘いから避けた方がいいよ!
泡盛の甕熟成について
泡盛の古酒造りに甕が適していると言われる理由は3つあります。
①甕は通気性があるため、酸素が通い酸化促進されること
②金属成分が溶け出し、熟成速度が他の容器より早い
③甕特有の香り(甕香)が品を良くする
その反面、手間をかけずに放置すると劣化しやすい欠点もあります。
よく「古酒を育てる」という表現を使いますが、まさに手間暇かけて育てないと美味しいクースにはならないのですね。そういう意味では、甕での古酒造りは少し上級者向けかもしれません。

初心者にはビンのままのクース造りをオススメしているよ
カラカラだけじゃない!泡盛とやちむんの関係まとめ
今回は、泡盛をより深く楽しむための様々な酒器と、やちむんとの関係についてご紹介しました。
カラカラや抱瓶、ユシビン、チブグヮーといった個性豊かな酒器たちは、それぞれが泡盛の歴史と文化を物語っています。そして、泡盛の風味を育む甕は、やちむんの奥深さを象徴する存在です。
これらの器を手にすることで、泡盛は単なるお酒ではなく、沖縄の歴史や風土を感じさせてくれる存在になるでしょう。ぜひ、お気に入りのやちむんの酒器で、泡盛の新たな魅力を発見してみてください。